All You Need Is Movie

映画の感想が主。

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』の感想です。

一ヶ月以上も前に観て、その時に書きためていた感想なので、若干今更感は否めないのですが、ご容赦ください。。。

原作を読んではいないし、当時ツイッターで軽く話題になっていた(女性を中心に)ので、軽い気持ちで観に行ったら最高の映画だったのでシェアしたいと思います。

 

 

まずキャスティングが豪華すぎました。

次女に『レディ・バード』のシアーシャ・ローナン、長女のエマ・ワトソン、三女に『ミッドサマー』のフローレンス・ピュー、末っ子にエリザ・スカンレンという豪華四姉妹

そこに加えて圧倒的美しさを持つティモシー・シャラメ

監督のグレタ・ガーウィグ監督はレディ・バード』でティモシー、シアーシャと共演していて、ここの再タッグも激アツ!

もう豪華すぎる。てか画面が美しすぎる。

この美しさだけでも観る価値があると思う。

 

キャストが美しさ・可愛さを120%引き出す美術、衣装も見所。

ジョーとローリ=が服を貸しあいっこしてるっていうさりげない演出もぜひ注目すべし。

 

 

内容もめちゃ良かった!(以下ではネタバレを含みます。)


4人姉妹のそれぞれの個性が立っていて、観客、特に女性の観客は各々の中で姉妹のどれかに自分を重ねて観るのだろうなと思う。
姉妹はそれぞれ目標も生き方も違う。でもどれが1番かどうかの優劣をつけることなく、自分が幸せと思えるならそれでいいじゃんっと肯定してくれる。人には人の幸せがあってそれを掴めるように応援しようって前向きなメッセージが伝わってくる。

 

主人公のジョーのラストシーンが特に印象的。物語の中で自分たちの姉妹の自伝的小説を書くのだが、物語内の現実と小説の中のストーリーがクロスオーバー的に語られ、このシーンは小説で描かれたシーンなのか、主人公たちの実際の生活なのかあやふやになっていく。
ラストシーンで編集長に小説を持ち込んだ際に、小説のラストを変えろと言われる。ジョーは当初、小説内の主人公は結婚をせず、結婚しない生き方を肯定的に描くラストを書いていた。しかし、編集長的には売り上げが大事であり、女性の幸せ=結婚だと考えているから主人公に結婚させろと言う。ジョーはその要求に屈する。その後、映画のラストシーンでジョーは結婚するのだが、ジョーの実際の生活の中で結婚したのか、それとも自伝小説の中でジョーをモデルにした小説の主人公が結婚したのか、あやふやになる。

ここが本作のミソだと感じた。


つまり、本作のテーマは万人の生き方の肯定。

もっとピントを合わせると、女性のあらゆる生き方の肯定である。「女の幸せ=結婚」という固定観念から自由になり、自分の幸せは自分で決める生き方を誰もが持っているのだということを伝える作品だ。
そんなメッセージを持った映画のラストで、主人公が結婚して幸せになるという描き方がされたら、なんだ、結局「結婚=女の幸せ」かとなってしまい、全編を通して積み上げてきた全てが台無しになると思う。

主人公がどれかを決断してしまうと、観客としては、その主人公が選んだ人生が最も輝いて見えて肯定された生き方だと感じてしまう。

だから、主人公が一つの生き方を選ぶという結末を避ける必要があった。
そこで、監督は、上記の方法で小説内ストーリーと映画内ストーリーをクロスオーバーさせ、ラストシーン(主人公の選んだ生き方)を観客の解釈に委ねたのだと思う。


もっと言えば、ラストシーンを見て、「ジョーが結婚して良かった〜」と思う人は、自分は結婚して幸せになりたいという自分の価値観を再認識できるだろうし、
「ジョーは最後結婚よりも小説家としての成功に身を捧げることを選んだのだな」という感想を抱いた人は、そういう仕事で何かを残す幸せを追求したいという自分の価値観を再認識できると思う。

ジョー以外にも、他の姉妹の生き方に共感したのならば、その共感を通して自分の大切にしたい価値観に気づけるのではないかと思う。一人一人の心情に、それが溢れる一つ一つのセリフに共感し、自分と向き合える。

つまり、この作品は、監督が持つ理想的な生き方といった価値観を押し付けるのではなく、観客各々が、各キャラクターに対する共感を通して、自分の価値観や人生観をより鮮明に認識できるような仕組みとなっている。
映画やあらゆる表現には多かれ少なかれこういった機能は備わっているのだが、この作品はそれが明白であって、その分、観客に強く働きかけると感じる。

 

自分の価値観を再認識できる機会を与えてくれる映画という意味で

女性だけでなく、万人に観てほしい作品だと感じた。

 

なお、一部ではwhite lives matterな作品だという評価があるが、コロナの影響で上映期間がズレたことにより、BLM運動の高まりとバッティングしてしまったのであり、作品に特別WLM的なメッセージ性はないと感じる。何しろ、原作が出来たのが南北戦争直後であり、そうした時代背景を受けているため、ほとんどの登場人物が白人であるのは仕方なく感じる。実写化ということなので、主人公をアフリカ系に変えると違和感が出るし、そうした違和感はノイズになると思う。重要なのは登場人物が白人か黒人かという表面的な問題ではなく、受け手側が、メッセージを抽象化し、万人を名宛とするものと解釈する、メタ的な作業を行うことだと思う。

 

まあ何にせよ、ティモシーが美しすぎて、ダイエットを始めるきっかけにもなった作品でした。。。